※ この記事は、2019年5月28日に書かれたものです。
2020年5月20日に新しい動きがありましたので、最新の関連記事をリンクします。

いま『種子法(しゅしほう)』の廃止と『種苗法(しゅびょうほう)』の改正に対して反対運動が起こっています。

ところが、この2つの法律は何だか名前が似ているためか、同時に語られたり、ごっちゃに捉えられてしまう事があるようです。
そこで、まずは違いを明らかにする事で、それぞれの問題をまとめてみたいと思います。

「種子法」と「種苗法」は全く違う法律

この2つの法律の違いは、その”役割”の違いなので、それぞれの役割をざっくり説明します。

「種子法」の役割

日本の農産物の中でも「お米」だけは、特別に国が管理していますよね。
そして、お米を守っていくには“種”を管理する事も必要になります。

そこで“お米の種は国が作る”という事を定めたのが「種子法」です。

逆に言うと、今まで“お米の種”を作る事は、民間企業にはほとんど許されていなかったのです。

そして「種子法」が廃止された今、お米の種の管理は都道府県などの「地方自治体」に委ねられ、民間企業もお米の種を作って良い事になったのです。

「種苗法」の役割

一方「種苗法」の役割は、農産物の新種を開発した人が栽培を独占できる「育成者権」を保護してもらう法律です。

農業の世界での『特許権』や『著作権』のような存在で、より良い農産物を作るために“品種改良”を推進する目的で作られました。

改正の内容はまだ決まっていませんが、改正の目的だけはハッキリしています。
それは、いま問題になっている“日本ブランドの農産物が海外に盗まれている事態”への危機対策です。

盗まれているのが分かっていながら、今の日本の体制では事実上“泣き寝入り状態”になっているらしいのです・・・。

「種子法」と「種苗法」には共通があった!

「種子法」と「種苗法」は、このように全く違う法律です。

ただ、その目的にはある“共通点”が存在しています。
それは「農業に民間企業の参入をバックアップする」という目的です。

「種子法」の廃止では、今まで“お米”には参入できなかった日本の種メーカーが参加できるようになりました。

そして「種苗法」の改正で農産物の「育成者権」の保護が強化されれば、企業は競争力を増す事ができます。
もし新しい品種が第三者に“無断コピ―”されたら、訴訟を起こして対抗する事が出来るからです。

ところが企業にとって有利な事は、家族経営の農家にとっては不利になってしまう事が多いようです。

反対派や一般人が問題視している事

「種子法」の廃止は既に決定していますが、今も「この廃止は違憲だ」とした訴訟が起こされたり、反対派の人々が抵抗を続けています。

そして「種苗法」の改正についても、反対派の人がいろいろと運動している状況です。
どちらかと言うと“反対派”の意見の方が強く、広く出回っているように感じます。

でも それもその筈で、原因は日本の農業従事者の割合を見れば一目瞭然です。


日本の農業は、ざっくり言うと9割が「家族経営」で、企業経営はほんの1割くらいしかありません。

そして今回の法律の動きは家族経営にとって不利な事が多いので、反対の人が多いのは当然といえます。
逆に企業側にとっては有利になるので、何も言う必要は無いわけです。

国の方針としては、農業も国際競争力をつけなければ、国が保護しているだけでは負けてしまう という方向に傾いてきているようです。
ところが家族経営のような農家は、大企業が強くなればなるほど競争に負けてしまう恐怖を抱えているのではないでしょうか。

そして一般の人の意見にも、お米の種づくりに企業が参入する事には拒絶感がある人が多いようです。
それも特に ”海外の企業” と言った方が良いかもしれません。

一方「種苗法」の改正については、権利を守る為に “種の再利用が禁止” される事への危惧があるようです。

確かに自然の植物は、実から種を取ってまた植える事が出来る筈なのに、種を購入し続けなければならないというのは不自然な気がします。
なんだか農家への “縛り” ばかりが増えていき、肝心の日本の農産物という “知的財産” が海外に盗まれるのを阻止する具体的な方法が提示されていないので、不安ばかりが募るのかもしれません。


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