※ この記事は、2019年5月27日に書かれたものです。
2020年5月20日に新しい動きがありましたので、こちらに最新の記事をリンクします。

農林水産省が「種苗法」という法律の改正を検討しています。

改正の理由は、ブランド果物などの「新しい品種」が海外に流出しているという問題のためです。

「種苗法」とは “植物の特許制度” のようなものです。
農業の世界にも、特許のように “新しい品種” を創った人に、その種や苗の販売の“独占権”を与えるという法律が存在していたのですね。

「種苗法」を改正すると決めた理由

「種苗法」の改正案が出された理由は、日本が品種改良して作り上げた“国産ブランド”の果物などが、海外に持ち出されて流通しているという問題が原因です。

いよいよ農産物も “特許権” や “著作権” のように無断コピーには訴訟で戦わなければならない時代が来たようです。

まだ これから議論に入るという段階ですが「種や苗の国外への持ち出しの取締」や「海外での品種登録の支援」「訴訟の後押し」などを強化するという方針です。

「種苗法」改正のメリット

新種の権利が守られるようになれば、第三者にコピーされて、努力が水の泡になるリスクを減らす事ができます。

また新種を開発した人は種を売ったり、ライセンス料を得る機会が増えるので、更に良い新種を生み出せるようになり、種苗産業が発展します。

ただ今のところ、海外への流出を防止したり、取り締まる為にどんな対策がなされるのかは、よく見えません。
これからの議論に期待したい所です。

「種苗法」改正のデメリット

種苗法の改正で、反対派が一番心配しているのは「自家増殖の禁止」に関してのようです。


「自家増殖」は「自家採種」と言われたりしますが、ざっくり言えば『作物から種子を取る事』です。

今までは、購入した種をまいて植物が成長したら、実から種を取ってまた植える事が出来ました。
ところが今回の改正では、登録された品種に関しては「原則禁止」となるのです。

ただ禁止といっても、許可を得れば可能なので、禁止というよりは「登録制」になると言った方が良いでしょう。
登録品種は2016年までは「82種」だったのが、今では「387種」に急増しています。

登録された品種を栽培したければ、種を植えるたびにロイヤリティを支払う義務が発生する事になります。
今まで支払わずに済んでいた経費が新たに追加されるので、農家にとっては不安の種になっています。

改正の弊害や問題点とは?

「種苗法」の改正には、かなり反対派の声があがっています。

その背景には、日本の農家経営が圧迫されるという危惧があります。

新しい品種の登録は、中小規模の農家にとってハードルが高いものです。
新種の登録をしたり、権利を主張するために訴訟を起こしたりするのは難しく、改正のメリットが享受できません。

そして、もう一つの主張として「食の安全性」への危惧が挙げられています。

どういう事かと言うと、今回の「種苗法の改正」は「種子法の廃止」という法律と関係があって、どちらも「企業の利益を優先させる」事で一致しているという主張です。

そして企業が活動しやすい環境を作ってしまうと、
農業の領域にも、巨大な多国籍企業の参入を許すキッカケになるというのです。

例えば『モンサント』という会社が買収などで巨大化している事を例に上げ、
モンサントの扱う「好ましくない」農薬や、遺伝子組み換え種子のようなものが、
いずれ国内にも流通するようになる、という理屈です。

ただこの意見には飛躍があるようで、モンサントは種子会社として最大でも、
世界市場に占める割合は、全体の5%未満です。
農家には、種の選択肢はいくらでもあります。

確かに、一般的なスーパーマーケットには「無農薬野菜」という選択肢はほとんど無いし
「遺伝子組み換え」の作物も中にはあり、今後増えていく可能性もあります。

一方で、いまや農産物は、農家から直接購入できるようになっています。
安全な農産物が買えるらでぃっしゅぼーやのような直販の選択肢は、今後ますます増えていき、安全でない食品は需要が無くなっていく事が考えられます。

「種苗法の改正」は、あくまでも種苗の開発者の権利を守る為のもので
「種子法の廃止」とは別の話です。
食の安全に脅威を及ぼすという主張には、根拠がありません。

ネットの反応

このニュースに対して、ネットの反応としては

昔から問題になってたのに、政府の対応が遅すぎる

盗みに遭っては、開発コストをかけている側が価格で勝てるわけがない

新品種の登録は農家の手に余るので、手助けする仕組みも必要
これからは遺伝子情報の登録、管理も大切になる

という意見が見られました。




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